11 思考のエンジンとしてのハイパーテキスト ハイパーメディア・ライプラリーとライティング2
この章には何が書かれているのか?
ハイパーテキストとは何か?
いくつものテキストがお互いの補遺になっている状態
一つのたとえとして、カードを思い浮かべるとイメージしやすい
各々のテキストがカード、カードの束がハイパーカード
実際のカードとの違いは、カードの部分がそれぞれ別のカードの部分ないしは全体とつながっていること
これを「リンク」と呼ぶ
ザナドゥ・プロジェクトの説明
ハイパーテキストとは情報の複雑さという事実を扱います。またほとんどの情報は情報に意味を与えるコンテキストのなかに埋め込まれているという事実を扱います。
複雑な情報は、複雑なまま扱う
特定の意味を理解される情報もコンテキストとして与えられる
コンテキストに強く依存している情報は、コンテキストとなる情報も含めて処理しようとする
これはデータを特定の構造にあてはめて処理するデータベース・マネジメントとは発想の根本から異なる
ハイパーテキストは簡単な構造になっている
テキストを電子の糸(スレッド)でつなぎ合わせているだけ
rashita.iconリンクという表現とスレッド(糸)という表現の違い
さらにアリアドネの糸というメタファーとのつなぎ合わせ
全ての事柄が関係しているとき、その関係を知ろうとする人間には十分な能力を持つ
カード・メタファーの限界
カードとして整理される知識を前提とするような思考のエンジンに限定されてしまう
rashita.icon異なる思考のタイプがあり、それぞれに合致したエンジンがある
たとえばそれはタイプライター的思考と、そのエンジンとなる完備した索引を持つテキストとOEDのような辞書
ハイパーテキストは、整然とした固定化した枠組みの中で処理される知識の在り方とは異なる知識の種類を処理する装置
グーテンベルク以降、情報は本の形に順番に二次元で並ばされて、ヒエラルキーをつけて整理された
ファイリング・システム、カード・システム
これにそぐわない形の知識は排除されてきたと言える
知識は、以下の形で頭の中にはない
議論の中心を形成するものと、そうでないものを区別する形
むしろ、すべては同じ比重で関係している
rashita.icon同じ重さを持っているのではなく、同じ比重で「関係」しているという点に注目したい
ハイパーテキストは、上記をそのまま保存しようとする試み
詩へのアプローチ
コールリッジという詩人
ロマン派的な複雑に混乱する知識の断片の中に暮らし、そこから詩を作り出していく
ある知識は別の知識と複雑につながり、その中から想像を生かして、別のつながりをつくり、複雑なコンテキストを持つ詩を作り出す
ザナドゥという名称にぴったり
複雑さを目指す
モダニストの詩人(たとえばパウンド)
索引化され系統的に適すとかされたさまざまな情報の集積の中に単純な構造を当てはめ、詩を成立させようとする
単純さを目指す
パウンド的な思考に(も)コンピュータは役立つ
コミュニケーションを情報伝達と見なせば、単純な構造も効用がある
rashita.icon「おはようございます」という文言を、その度ごとに生成する必要はない
とは言え、複雑な形で存在する知識の在り方を否定する必要もない
専門知、近代的な知
近代的な知は、単純に整理された古典的な知識体系に依存している
その単純さが、専門家の権力を担保していた
rashita.iconここは議論の余地がありそうだが
だからこそ、複雑な知識のありようは神秘主義として扱われたり、あるいは反権力の芸術や美学の分野になっていた
文学の分野でもそうした試みはあった
シーケンシャルな構造の破壊
シーケンシャルなテキストを部分に分解して(カード化し)、別種の構造、見えない構造として再解釈する
レヴィ=ストロールなどの構造主義的なリーディング
あるいは、滑らかな連鎖を断続的に切断して、ハイパーテキスト風に断章を連ねる
そこでは「わかりやすい単純なディスコースに従っているテキスト」とハイパーテキストは別物として扱われていた
複雑な関係の知が存在していると実感したのは、ポストモダニストではなく科学技術の最先端をいくエンジニアたちであった
複雑ではあるが、ある種の秩序を持った知識が存在している、という実感
アーギュメント
研究者の夢
Linkの考え方
二つの画面で異なる資料を閲覧し、その二つにつながりをつけることができ、そうしておけば以降はボタンを一つで呼び出せるようになる
rashita.icon二つの画面→マルチウィンドウであった。また、ボタン一つという簡易的な操作であったのは注目に値する
ダグ・エンゲルバートによるハイパーテキストの実装
1968年「アーギュメント」の原型NLS(oN-Line System)
アーギュメント(ARGUMENT)
マクドネル・ダグラス社
マルチユーザー・ネットワーク環境で使用するテキストエディタ
使用料は1時間10ドルから15ドルとの噂
ウィンドウとフィルターを備えたワードプロセッサー
必要な情報の入っているテキストだけをデータから捜し出す
共同作業ができる
メッセージの交換、同一データの共有
ワードプロセッシング、アウトライン・プロセッシング、ウィンドウ、データの共有などの起点とも言われる
テッド・ネルソンによれば「人間の精神を拡張する」
「人間の知性が展開していくプロセス(アーギュメンテーション・オブ・インテクレイト)」をよりよく作動させるための道具
rashita.iconAugmentではない?
アーギュメントのようなシステムは、他でも実装可能である
ワードプロセッサとテキストデータベースを使えばいい
rashita.icon著者は、オン・ラインでの共同作業は難しいだろうとあるが、現代ならこのCosenseのように余裕でこなせる
高度な科学技術を使用としたシステムの使用説明書は、線形のライティング(単純な体系の中で知識を整理したもの)では処理できなかった
状況が変われば、同じ知識でも使い方は異なる
ハイパーテキストの必要性が実感される
同様のことが人文科学の書き手においても言える
ライティングとは、決まり切った形式(ディスコース)に新しい知識を当てはめることではない
→今まである知識を自分の見方で整理し、体系づける試み、新しい形式を発見する作業
知識はどのように関係づけられるかという思考の過程を記録するのがリンク
rashita.icon機械的なリンクの付与に知的生産上の意味がないのはこれが関係している
知識が特権的であれば、決まり切った形式での整理でも受け入れられる
rashita.icon形式が重要ではなく、知識さえ受容できたらいい、という捉え方
知識がネットワークを通して共有される場合、大切なのは知識を組み立てる方法
取得と組み立てのシステムが、アーギュメントである
ザナドゥは、リンクと共同作業を同時に持っている
デッド・ネルソンによれば「地球規模での文献処理システム」
世界中の文献を共有する
共有によって情報の全体像を減らすことが可能(重複を無視できるから)
データの保存システムで、データ同士の関係も保存している
rashita.iconインターネットそのものだが、現状のインターネットははたしてそうなっているか
こうしたものは、プロセスの中でライティングにする最高の道具
動かない対象であれば、こうした道具を使わず、資料をヒエラルキー構造で整理し、索引をつくり、辞書を作ればいい
変化するものの場合は、構造・索引・辞書を作り直し続けなければならない
タイプライターとカードシステムはそのためのシステムだったと言えるが、変化するプロセスにある特定の流れをつけるものであるという限界はある
流動的で変化し続ける対象では失敗する
ハイパーテキストを使った資料の場合
情報と共にリンクも増えていき、複雑な情報は複雑なまま保存され、データに何らかの秩序が(単純ではない秩序が)生まれる
すでに保存された知識を使って新しい体系を組み立てると、その体系が新たな知識として保存される
ハンズ・オン
rashita.icon本+フロッピーで提供されているwikiのようなもの
どのようなページ構成であるのかが紹介される
(1)表紙の図版
(2)イントロ
(3)基本概念の中の詳しい構成
(4)基本が年の表紙図版
(5)概念の一覧
(6)用語の定義
(7)文章中の別の言葉
(8)基本概念:ノード
rashita.iconいちいち表紙図版がついているのがwikiとの違い。
表紙は必要か、表紙はどんな機能を持っているのかを考えるのは面白い
rashita.iconいくつか大切そうな基本概念を引いておく
ツアー
ハイパーテキストは自由にデータを操作していくことが出来、次から次へと新しい概念を連結させることが出来る。しかし、その一方、特定の方法で知識を体系づけておく方がよい場合もある。前もって設定されたリンクの連鎖を、ツアーと呼ぶ
パス・ヒストリー
rashita.icon本文中で解説はないが、「経路の履歴」ということで、Webブラウザに実装されている履歴と同じようなものだろうか。
ナビゲーション
ハイパーテキストは、必要な情報がさまざまな相関関係をもちながら存在しているというデータベースの一種なので、ブラウジングをしている最中に、いったい自分が情報の海の中にどこにいるのかが分からなくってしまうことがある。そこで、いつでも自分がどこにいるのかを確認できるよう、ナヴィゲーションという一種のマップの工夫がなされている。
こうしたシステムを使うことで、自分の好奇心と考えの展開に合わせて、自由にデータのなかを航海していくことができる
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